『見開き 海域 交易』 2019
ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『Argumentum ornithologicum - 鳥類学的推論』をモチーフとして制作した。目を閉じると幾羽かの鳥の飛ぶ姿が見え、その数を特定することはできないが、鳥は確実に何羽かであった、 というような記述から、私にとっての瀬戸内海の島々がそのような記憶として浮かんだ。 数として捉えられない記憶とその変域についてのテクストが、故郷として思い出せるが 数えられない多島海の島々の姿という具体的なイメージと重なってみえた。 多島海について調べているときに沈黙交易という資本主義的な市場とは違う価値の交換の在り方を知った。 物と物の移動の底に流れる信頼の潮流と、姿の見えない相手とのささやかな交流の舞台としてのこの場所が、 本文中で神の存在として導かれた部分を埋めてくれた。
多くの島々が見える浜辺で撮影を進めた。 波打ち際に自作の本を置き、火のついたタバコを狼煙に見立てて供え、その場を去る。 アングルが変わり、波が本を洗うように見える様子が映される。 もう一度その場所に訪れた時には本は無く、私は屈んで手を伸ばすが、 何か拾ったかどうかわからないまま、映像が終わる。 今作は二画面であり、上記の映像は右側で流れ、左側では本の見開きが少しずつめくられていく。 左右の映像の尺は同じである。
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ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『Argumentum ornithologicum - 鳥類学的推論』をモチーフとして制作した。目を閉じると幾羽かの鳥の飛ぶ姿が見え、その数を特定することはできないが、鳥は確実に何羽かであった、 というような記述から、私にとっての瀬戸内海の島々がそのような記憶として浮かんだ。 数として捉えられない記憶とその変域についてのテクストが、故郷として思い出せるが 数えられない多島海の島々の姿という具体的なイメージと重なってみえた。 多島海について調べているときに沈黙交易という資本主義的な市場とは違う価値の交換の在り方を知った。 物と物の移動の底に流れる信頼の潮流と、姿の見えない相手とのささやかな交流の舞台としてのこの場所が、 本文中で神の存在として導かれた部分を埋めてくれた。
多くの島々が見える浜辺で撮影を進めた。 波打ち際に自作の本を置き、火のついたタバコを狼煙に見立てて供え、その場を去る。 アングルが変わり、波が本を洗うように見える様子が映される。 もう一度その場所に訪れた時には本は無く、私は屈んで手を伸ばすが、 何か拾ったかどうかわからないまま、映像が終わる。 今作は二画面であり、上記の映像は右側で流れ、左側では本の見開きが少しずつめくられていく。 左右の映像の尺は同じである。
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